はぁ、と息を吐き出すと白くなって空気に溶けて消えていく。
耳が痛くなるくらいにシンと静まり返った放課後の教室に今は私と田島は二人きり―。








 田島が切羽つまった声で私の名前を呼ぶ。細く華奢に見える腕で、何処からそんな力がでるのっていうくらい荒々しく引き寄せられる。そのまま唇を耳たぶに寄せて口付けられる。優しく口付けられているはずなのに、その様子はまるで昨日テレビで見た肉食動物を思い起こした。

っ…」

 そのまま何度も唇に口付けられながら田島が私の名前を呼ぶ。それしか言えないかのように何度も。
 ふと、先日テレビでしきりに熱弁をふるっている最近の性に対する子どものありかた、みたいな番組を思い出した。少し頭が後退しかけているその男はやたら、思春期だから、高校生だから、子どもだからという言葉を連発していた。夕食を食べながら見ていたので母親が「本当最近の子って怖いわね」と言っていたのがやたら印象的だった。
愛や恋だなんて語るのなんてまだまだ早い。そんなのことはわかっている。それでも15年間生きてきて、この人しかいないってわかっている人になら。心を捧げても、体を捧げてもいいのではないか。後悔しないのなら、いいんじゃないかなって思ってしまう私はやっぱり子どもなのかな。

「田島」

 彼の首の後ろに腕を回して抱きつく。二人の間に隙間ができないくらいにきつく、きつく。体が二つあるからこうしてお互いに求め合う。愛してくれるから、愛するから。貴方だけを―



 くるり。まるでパネルがひっくり返ったみたいに。もう、いつもクラスでバカ騒ぎをしている田島の顔ではない。欲を前面に出して一人の男の顔をしている。いつもの田島の顔しか知らない人だったらビックリするかもしれない。(野球部あたりのメンバーだったら目が点になるかもしれない。)でも私はこの田島の顔が一番好きだ。私を、私だけを、見て求めてくるこの田島の顔が、

「田島、好きだよ」




く   る   り

(本当の貴方をもっと見せて、)