久しぶりに野球部がお休みになった日曜日、田島悠一郎は自宅から自転車で10分ほど掛かる彼女の家までを7分で到着すると携帯で連絡も何も入れていない状態でいきなり押しかけた。そんな田島に最愛の彼女、は驚いた顔を見せたが快く向かえ二階のの部屋で田島は無事に麦茶を飲み干していた。

「もう、悠一郎ってばいきなり来るからビックリしたよ」
「だってさ、いきなり休みになったからのとこ行って驚かそうと思って。なぁ、ビックリした?」

 悪気もなくにひっと笑顔の田島に怒る気力も失せたは小さくため息をつく。床に座っていた田島はコップに入っている氷をガリガリと歯で噛み砕きながら満面の笑みを浮かべて机の椅子に座っていたのほうへと近づく。

「なあ、っ」
「ん?何?」
「こっち、下来て!」

 手招きされるままには椅子から降りて床に膝をつける形で座る。田島はその姿を確認するとごろんと横になりの膝へと自分の頭を乗せる。は特に驚いた様子を見せることなく田島の少し硬めの髪を撫でる。

「悠一郎は膝まくら好きだよね」

「うん、すっげー好き!の膝柔らかくて温かいし」

 屈託なく笑う田島を可愛いと思いながらも頭を撫でてやると田島は気持ち良さそうに目を細める。

(本当、子供みたい…)

「そうだ!!」

 いきなりガバッと起き上がった田島には慌てて手を離すと目を丸くして田島を見つめる。

「ど、どうしたの?悠一郎」
「たまにはさ、俺ばっかりじゃなくっても甘えればいいじゃん!」
「え?」
「ほらっ」
「ちょ、ちょっと、悠一郎!?」

 わけがわからないまま腕を引っ張られて無理やり田島の膝の上に寝転ぶ形になったは戸惑いを隠せないままだったが、よしよしと満足そうに笑っての髪を撫でる田島の表情に言葉を飲み込む。

「もう…本当に突然なんだから」
「だって俺だってゲンミツにの彼氏だしさ、俺ばっかりじゃなくってが甘えられるような男のほうがいいじゃん?」
「悠一郎、ゲンミツの意味違うよ」

 ゆっくりとした時間と髪を撫でる田島の手が気持ちよくてそれ以上は口を噤む。いつもと違う目線から見る田島の表情も何だか新鮮だった。手を伸ばして田島の頬に触れると田島がの顔を覗きこむ。

「悠一郎…キスして?」
「ん」

 ゆっくりとお互いの顔が近づいて唇が軽く触れ合う。真っ直ぐに見つめてくる田島の瞳に浮かんでいる表情は紛れもない自分ひとりだけ。この瞳に自分はどう写っているんだろう。

「悠一郎」
「ん?」
「幸せだね」
「おうっ、と一緒だからな!」




気 ま ぐ れ オ オ カ ミ




(今日一日は俺に甘えること!ゲンミツに!)
(じゃあ今日はエッチなしね)
(えー!無理!!俺死んじゃう!!)