クリスマスというのは有名なイエス・キリストの誕生日だって言うことも、私は別にキリスト信者というわけでもないけど、女の子だったらついついクリスマスに胸を躍らせてしまう。(だから今日の私はそわそわしてるのかもしれない。)
一昨年のクリスマスは家族でいつもよりちょっぴり豪華な食事とクリスマスケーキでクリスマススペシャルのテレビを見て笑いながら過ごした。(あの時に見たお笑いコンビのコントは今現在でもちょっとツボ。)
去年は会社の同期と一緒に愚痴もかねてクリスマスに飲み会をした。お互いにクリスマスに過ごす相手ができるのを競争だ、なんて言い合って次の日が会社なのに飲み明かした。(アンタはいるくせにって同期に思い切り叩かれた。)
でも、今年は、今年のクリスマスは――
「隆也っ」
走るときに吐き出す息が白い。真冬の空は寒いせいか透き通るような青色で、よくテレビドラマとかでのホワイトクリスマスなんて、ロマンチックな天気模様ではない。(大体あんな都合よく毎回クリスマスの時に雪は降らないと思う。)
見つけた隆也はクリスマスイルミネーションで飾られたウインドウを背に寄りかかっていた。少し絵になっていてドキッとしたけど気付かれないように平常心で片手を振って歩み寄る。名前を呼んだ声が聞こえたのか、隆也がマフラーに埋めていた顔を上げて私のほうへと片手を上げる。マフラーから出た鼻のてっぺんがちょっぴり赤くて思わず笑みがこぼれた。
「ごめんね、遅れて」
「いいって。仕事だったんだろ?」
「隆也も。お疲れ様」
「おー」
今年のクリスマスは隆也と過ごす。ありがたいことに今年は24日のクリスマスイブが祝日という実に社会人には嬉しい。こうして丸1日二人でゆっくりとクリスマスを過ごすことなんて初めてだったから。(それでも私がちょっぴり遅れたのは残った仕事があったからだけど)
「今日も寒いね」
「朝起きんのキツイ」
「わかる、私も会社行くのいつもギリギリだもん」
一昨年も去年もお互いに付き合っていたはずなのに予定が合わなくて一緒に過ごせなかった。(やっぱり社会人って忙しいよね、って思う。)さり気なく繋がれた隆也の腕をぎゅっと力を込めて握ると、同じように握り返してきてくれる。たったそれだけのことがこんなにも嬉しい。
「今年は二人で過ごせるね、クリスマス」
「ワリ、俺のほうがいつも都合悪くて」
「いいの。今日は1日隆也を独占しちゃうから」
「なっ、おま…よく恥ずかしげもなくそーいうこと言え…」
繋いでないほうの手で隆也が口元を覆ってそっぽを向く。しってるよ、その姿。照れ隠ししてるって。高校の時からの付き合いだもん。でも耳まで赤いの気付いてないのかな。
「隆也」
「ん?」
「メリークリスマス」
「…メリークリスマス、」
高校生の時よりも逞しくなった隆也と手を繋いで。キラキラと輝いて綺麗なクリスマスイルミネーションを二人でくぐって。唇を、体を寄せ合って。
メリー・クリスマス!
(素敵、今年は隆也一色だ。)